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【2024/03/29 06:14 】 |
お誘い
一応完成ですけど、正直完成させる事最優先で吶喊書きしたんで、SSとしての完成度は目茶苦茶低いです。起承転結もろくに無いし。
////////////////////////////


戦闘楽団デスパレードの、皆が集まっている部屋を出て直ぐ辺りの廊下。
其処で唐突に立ち塞がった訳だ。鬼頭菫の進路に、赤金茜が。
コレはそんな、割とどうでも良い一幕の話。



「そろそろクリスマスですね。学園は賑わうでしょう…」

よし、未だ声は震えていない。
この唐突な“ふり”に対し、見れば鬼頭・菫は存外アッサリとした調子で首肯した。

「ああ、そうだね、教室の方も賑やかになってたねぇ!」

「え、ええ。騒がしい楽しい賑やかな催しも多いでしょう」

コクコクと何度も頷きながら同意する。
態度がソワソワしてしまうのは、情け無いが仕方が無い。せめて相手の目をしっかりと見て…会話を…

「去年も思ったけど、クリスマスの賑わいはだいぶ凄い感じ?」

「え、ええ」

……あ、今ちょっと視界の端に人影が見えた気が、確認しよう。
いや、別に菫の顔から目を逸らすためでは無い。ほんとほんと。
その証拠に今から目線を戻して、菫の目を見……

「あんまり人がいると飲まれそうな気もするんだけど」

「そうですね。そうですよね!だからと言いますか、その、風情を静かに楽しむ、と言うのも一興かと思いまして……」

あ、ああー!髪が気になるなー!!
目にかかりそう、未だかかってないけど。けどその、かかりそう!だからこう弄って位置の調整を……あ、そういえば結果的に視線は菫から外れるけど。
いやこれはあくまで結果的なものなわけで…!

……って、何を逃げるんだ。
もう、目は逸らしたままでもなんでも良いから兎も角コレを…

「こんなものがありまして」

「――……?」

茜が差し出した紙を受け取り、内容を読み始める菫。
内容は何のことは無い。クリスマスに催されるイベントの一つの勧誘だ。

「その、そ、の…折角ですから……ご一緒するのはど…う……かと……」

頬が熱い。心臓がバクバク言っている。
肩の肌の辺りにあわ立つ様な感触、背筋を虫が這う様な焦燥感。
嗚呼、今すぐ意味の無い叫びを上げつつ走って逃げ出してしまいたい…。

「どうせならお友達と一緒の方がですね……」

菫は文面を読みながら、黙って茜の話を聞いている。

「丁度菫様がお暇なら……違う…そうじゃなくて…!」

何を言っているのだ自分は。
何を言い訳しているのだ。
何を逃げているのだ。

「…その……だから……私は………」

逃げないと決めたじゃあないか。
この身は、長く無いし。長くちゃいけないけれど。
この学園に来た目的を忘れた訳じゃないけれど。

けど、いや、だからこそ。逃げちゃいけない。
この感情に、衝動に、気持ちに、正直に。

この人に相対そうと。


「──!」


顔を上げろ!
顔が真っ赤だ?良いじゃあないかそれがどうしたって言うんだ。
見られりゃ良いじゃないかどーせこの人はその程度じゃこっちの気持ちに気づきやしない。ああ、安心だ、安心だ嬉しいなド畜生。いやそれはどうでも良い!

「……ぁおり様と……ご一緒したいんです」

怖い、怖くてたまらない。
けどああもういいじゃあないか、視線の先に菫様の目が嗚呼貧血を起こしそうだええい踏ん張れ!我慢しろ気合を入れろ此処が勝負所なんだ!!

「…ご一緒、したいんです。是非。その、菫様と…!」

もっと声を出せ。
震えてても良い、だけどちゃんと相手に伝わるように。
この気持ちが、ほんの少しでも相手に伝わるように。


「………その、だから……貴方と!」


ほんの少しで良いから……強さを。


「鬼頭菫様とご一緒にこのイベントに参加したいと思うのです!」



言った。

息が苦しい。喘いでも喘いでも呼吸が整わなくて、ゼハ-ゼハーと見っとも無い声が止めれないけれど。首筋には冷や汗だか脂汗だかがビッシリと浮いていて、ジメジメと気持ちが悪いけれど。視界は回りそうで、身体はフワフワして、今にも倒れそうな気分だけど。

「勿論、菫様が…良かったら、ですけど。良いなら……」

だけど、ちゃんと言えた。

膝は笑ってる。震えも止まらない。だけど、嬉しい。
伝える事が出来た。それが涙が出そうな位嬉しい。
目を離す物か。目を逸らすものか。
どんなに怖くても、返事を聞くまでは、この顔を背けたりは…


……ん?


返事?

あれ?何か大事な事を忘れているような……

返事。

あー、そうだそうだ。

断られる事もあるんだよね。

そうそう、言う事に夢中でスッカリ忘れて……



………!!?!?!??!



ばばばば、馬鹿!馬鹿か!?馬鹿か私!?
そうだそうだそうだった断られるかも当たり前じゃんNOって言われるかもしれな、うわああああ!?逃げたい逃げたい!?震えが!歯が噛み合わない!?ちょ、今冷や汗が吹き出る音が、確かにジュワって音が聞こえたよゴメン涙堪えれない出る!出る!こぼれる死ぬ、心臓が破裂するクソ目を逸らすもんかでもでもうわあああああちょ、ちょっと待って菫様口を未だ待って開かないで下さ──


「うん、いや、私は構わないよ!」


──世界が、止まった。


「お誘いどうも!あは、この間もそうだったね、いつも有難う」


さっきとは全然違う理由で出てきた涙がポロリと零れたけど、世界は止まってるので関係ありません。


「うん、でも構わないんだけど……」


菫様が少し首を傾げています。
流石に様子がおかしいって事に気づいたんですね。
けど世界は止まってるので関係ありません。

「具合悪くない?大丈夫?」

心配そうに声をかけてくれてます。
これだよこれ。何気なく凄く優しいんだよこの人。
正直反則だと思う。心臓を射抜かれたみたいな感触が。
けど世界は止まってるので以下略。

「……近々また何か大きいので遠出するみたいだし、無理はない様にね」

何を言ってますか貴方。
ああ、体調不良だと判断したんですね。流石です。
けど世界は止まって以下略。

「もしアレなら、回復くらいなら出来るから六甲の時一緒に……」

あsdfghjkl;:」zxcvbんm、。・¥くぇrちゅいおp@。

……え?今なんて……誘っ。え?
何だか何故だか止まってる筈の世界が物凄い勢いで亀裂起こしてるんですけど。
あ、いやでも止まってるから関係ありません。ええ。

「ああ、木乃香クンと一緒かな?まあともかく何か必要なら言ってね、って事で!」

言葉を続けながら、紙袋に手をかけて……

「まずは無事に帰ってくるの一番だからさ!」

何時も被ってる紙袋を少し上げて、笑いかけてきて。
時々しか見る機会の無い菫の素顔、それも優しそうな笑顔が……

いやまあ、けどだから世界は止ま以下略。


















デスパレードでの世間話を終わらせ、結社から出るべく廊下に出てきた岩崎木乃香が、完全に惚け切った様子で廊下にペタンと座り込んでいる茜を発見したのは、




それからタップリ1時間後の事である。
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【2007/08/09 04:06 】 | メモ | 突っ込み(0) | トラックバック()
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